雑記

Snow Man中心に色々。よく祈ってます。

映画マッチングを観て

 

3/17 加筆部分の文字色を変えています。

 

映画マッチングを観て大人の都合で歪んでしまった子どもたちの話だと感じました。
子どもたち(輪花、剛、吐夢)について掘り下げていきたいと思います。
調べながら書きましたが全て個人的に考えたことであり、こうだと決めつける意図はありません。何か言ってんな〜くらいに思ってください!

また愛着障害は診断基準において症状が5歳未満に現れるものとされています。考察時に愛着障害、愛着形成という点から考えていますが愛着形成がなされていないまま大人になったらこうなのかな……という妄想、こじつけです。実際の研究や臨床場面と異なっていてもご容赦ください。

 

 

 

【唯島輪花】
輪花は愛し、愛してくれているはずの母が自分と父を捨てていなくなった経験により恋愛や他者を信じるのが怖くなっています。
また同僚にすすめられたマッチングアプリへの登録も初めは消極的でした。なぜ登録に至ったのかについては母の言葉が影響したと考えます。
母から輪花への「あなたは、幸せになるのよ」という言葉は文脈から特に恋愛や結婚生活における幸せを示します。輪花はそれは無理だと言いかけ、やめていました。無理だと諦めるのは母への裏切りになるため幸せになりたい、母に応えたいという気持ちがあるのです。
恋愛が怖い、しかし母に応えるためにも幸せになりたい。矛盾した気持ちが消極的だったマッチングアプリへの登録、しかし乗り気ではなくレスポンスも素っ気ないという状況になったのだと思います。

他者と親密な関係を築くのに臆病な輪花ですが剛とは関係の構築が円滑な印象を受けます。
輪花はいくらか期待した吐夢との初めてのデートでその期待を砕かれます。期待とは吐夢が良い人だったらというだけのものではなく、マッチングアプリや恋愛そのもの、自分がとらわれている過去からの脱却などを含みます。期待を砕かれ、さらにほとんど知らない明らかにおかしい男から尾行されるという恐怖のなかで現れた剛に輪花はとても安堵したでしょう。ただの仕事相手ではなく、この人は安全で安心できる人と認識したのでしょう。それ以降も輪花にとって剛は優しく、自分を支えてくれる人でした。だからこそ輪花も剛に対して頼りにして信頼をよせていったのだと思います。やがて剛への気持ちは愛へと至りました。

愛した剛にも裏切られ、裏切ったと思った母が被害者であることを知った輪花の絶望は計り知れません。絶望する輪花を吐夢は2回助けました。1回目、剛から助けた際、輪花は吐夢を「自分への言葉や気持ちに偽りはない」としています。父の裏切り、剛の裏切りを経験した輪花にとって吐夢は唯一の自分を裏切らない人となったのです。
2回目は母を庇った自分を吐夢は躊躇うことなく助けたときです。そして吐夢は刺されてしまいます。それは自己犠牲という最大の愛の表現です。病室のシーンからも分かりますが輪花は、吐夢はずっと自分を守ってくれており、守ることが不器用な吐夢なりの愛の示し方なのだと、吐夢の愛情を受け入れました。
輪花は吐夢と関係性を築いていくことを幸せが始まったと表現し、母に話すコイバナは吐夢の話で締め括られるだろうと予感しています。土屋太鳳さんはインタビューのなかで、心を許して惹かれたのではなく見つけたと感じたのではないかと話しています。輪花は吐夢が偽りなく自分を愛していると気づいた=自分を愛し、自分にとっても愛を捧げる相手を見つけたのだと思います。
コイバナが吐夢で締め括られることからも輪花が吐夢に恋愛感情を抱いていると分かります。愛し愛される生活の始まりとなり輪花にとってはバッドエンドではない幕引きとなりました。

 

 

 

【影山剛】
幼少期、マルトリートメントを受けていたと考えます。マルトリートメントとは種々の虐待やネグレクトを含む、子どもの養育上、避けるべき行いのことです。帰宅し挨拶しても母は不倫相手とのチャットに必死で返事がない。家が清潔ではない。自傷行為をすぐそばでしている。これらは幼少期の剛を傷つけたと思います。しかし剛には母しかいません。インタビューのなかで金子ノブアキさんは剛のことを巣から出られない雛鳥と表現しています。行動の基盤に母がいるのです。副音声コメンタリーでも剛を子どものままだと話しているのが印象的です。
剛に関して私は心理的に母子分離ができていないのだと思いました。
愛着形成において3つの基地があるとされています。

 

安心基地:「特定の人」といるとき落ち着く、安堵する、良い気分になるなどポジティブな感情を生じさせる感情の基地
安全基地:恐怖や不安、怒りなどネガティブな感情を持ったときに「特定の人」に守ってもらえるという認知・行動の基地
探索基地:「特定の人」から離れて色々な場所に行ったり、人と関わったり、新しい情報を得るなどの行動。

 

剛はもしかすると母の不倫前はしっかりと愛着形成がなされていたのかもしれません。しかし不倫後はそれが揺らいでしまいます。加えて母は逮捕され強制的に引き離されてしまいました。剛は輪花から愛する存在を奪おうと考えました。それは自分が愛する存在(母)を奪われたからかもしれません。
剛は輪花に復讐しようと近づいたわけですが、笑顔を和田と対比して作り物めいた感じがしないと表現されています。復讐心や憎しみを抱く相手に心からの笑顔を浮かべられるだろうかと思いますが、剛は浮かべてみせました。なぜなら輪花に愛される必要があったからです。輪花について調べたなかで恋愛に対して臆病であったこともおそらく剛は分かっています。輪花に愛されるには、信じてもらうには作り物の笑顔ではいけなかったのです。復讐心を母と暮らしたあの公営団地に置いて、輪花と会っていたのではないかと思いました。

 

個人的に剛が影山節子と親子だなと思ったことが2つあります。1つは車の色が赤いこと。車が出たときにはまだ剛と節子の関係は明かされていませんでしたが分かりやすい繋がりの示唆でした。もう1つが影山の「幸せにすくすくと育ちやがって」という言葉と節子の「あんなに小さかった子が、こんなに大きく綺麗になって」という言葉です。どちらも輪花に似たようなことを言っていて、親子だと感じました。

 

剛の復讐は成されたのかについては、剛は輪花を殺すつもりがあったのかによると思います。剛は母が苦しんだ場所で輪花を苦しめようとしています。苦しめることが殺すことかどうかは不明確です。ただ捕まった後の剛がどこか満足そうに見えたのは剛自身を含め、輪花から愛する存在を奪うという目的は達成されたからでしょう。原作小説では吐夢が自身のことを「輪花にとって大切な人である」と主張し、剛も挑発に乗ってしまいます。吐夢は本気でそう思っているかもしれませんが、よく考えればそんなわけないと分かります。剛は吐夢のストーカー行為や輪花が悩んでいたことも知っているのですから、輪花にとってはただ助かるために吐夢を求めただけだと考え至るはずです。そうすると剛にとっての目的は達成されています。今後、輪花が母を取り戻し一緒に暮らし始めたことや吐夢の愛を受け入れたことを知ったとき、剛は絶望したり、再び強い復讐心を抱くのかもしれないと思いました。

 

 


【永山吐夢】
作中で唯一ハッピーエンドを迎えた人物です。おめでとうございます。
吐夢に関してはまだきちんと考えを深めることができていないため、考えたことを項目ごとに連ねていきます。

 

◯愛着形成がなされないまま大人になり、今もその影響がある
・コインロッカーに捨てられ、里親もいない(愛着を形成する対象の不在)
・感情表出の乏しさ(情緒の未発達)
・人との距離感の調整が下手
・依存的(付きまとい行為)
・白黒思考(命懸けで守ることこそ愛。そうじゃなければ偽り)
・試し行動(病室で他のマッチングアプリに登録したと話す)
自尊感情(自己肯定感)の低さ(自分を偽り陽キャを演じる。自分は愛されることがないと思う)

 

 

愛着障害でなければ起こらない愛着障害の3大特徴
吐夢くんの行動を当てはめてみました。
①愛情欲求行動
注文されたいためのアピール行動や愛情試し行動
ストーカー行為や屋上、病室でのやりとり。

②自己防衛
高校時代の彼女を階段から突き落としたり、マッチングアプリで会った女性に付き纏いベランダから突き落とすが故意ではなかった、裏切られた、切り捨てられたと思っており自分の非を認めない。裏切られた被害者だという意識。

③自己評価の低さ
自己否定または自己高揚
自分は誰からも誰からも愛さることがないという考え。

 


◯特徴的な服装
自尊感情が低いと服装への関心も低く、保守的となるとされています。
吐夢がいつも同じ服なのは関心の低さがうかがえます。

また愛着に問題を抱えるこどもの特徴の1つとして季節に合わない服装があげられています。夏場に長袖を着る行為は安全基地の確保からきています。作中で吐夢くんはずっと長袖を着ています。これは自らの安全基地を確保したいという心理からきているのではないでしょうか。

長靴はなぜでしょう? 保守的というより目立つものですよね。なんで?となりますが輪花がスニーカーをプレゼントしたらそちらを履いており、こだわりがあるわけではありません。
・履けたらなんでもいいので仕事上必要で所持している長靴を仕事以外でも履いている
・血液がついても洗いやすい
この辺が理由かなと思います。

 


◯なぜ他者との関わり(愛)を求めるのか
自己決定理論には5つの下位理論があり、そのうちの1つに基本的心理欲求理論というものがあります。
自律性、有能性、関係性という3つの生得的な基本的心理欲求を仮定し、これらの欲求の充足がウェルビーイングやパーソナリティーの統合的な発達に繋がるというものです。つまり誰かと関わりたい、良好な関係を持ちたいというのは生まれながらにして備わっている欲求となります。したがって吐夢が他者との関わりを求めるのは自然なことだと考えました。

 


◯吐夢がマッチングアプリに登録し、殺人事件を起こすまで
母に捨てられ、里親になる人もおらず、友達は本当の自分ではできない。初めて好きになった少女には裏切られた。
→ 自分は愛されることがない。自分を愛する人がいるのかと疑う。
マッチングアプリに登録する。
(身近な人間がいない、また身近な人間に愛されてこなかったから対象を広げたのでは)
→「いいね」が本物の愛か確かめるためありのままの自分を出すが拒絶される。
→なぜ「いいね」を押したのか。そもそも本物の愛がなくても押せてしまうのか疑問に思う。
マッチングアプリは虚構の世界、そしてマッチングアプリでの愛は偽りのもの。それなのに結婚(真の愛)に至ることができるか?
→だから確かめた(殺人事件を起こした)

 


◯疑問点
・どうしてマッチングアプリに登録し続けているのか
・どうして殺人を続けるのか
マッチングアプリに登録し続けた理由は他者との関わりを求めているからと虚構の世界でも真の愛に至ると信じたい気持ちがあるから(至ることを示しているのが片岡夫妻)だと思います。
信じたい気持ちは愛されたいという欲求から来ています。
殺人を続ける理由もマッチングアプリからでも真の愛に至ると信じたいから。しかし輪花で確かめることはできないので他の人たちで確かめ続けるのではないでしょうか。

 


◯壊れるとは
吐夢は輪花に対して誰かに壊されたくない気持ちと自分で壊したい気持ちがあります。
「彼女はきっと壊れるだろう。壊れている僕と一緒にいるかぎり。天使から悪魔へと生まれ変わり、僕と同じになる」という言葉から考えると
壊れること→天使から悪魔になること
僕と同じ→吐夢はずっと愛を求めている
悪魔→餌を捕食するクリオネ
ただひたすら愛を求める、貪る、そんな存在になることなのかなと思いました。
余談ですがクリオネは巻貝の一種でありながら巻貝を食べるので共食いをしています。

 

 

 


【その他】
◯マリア(節子)
未婚の母→処女懐胎を連想
節子、左手薬指に指輪してません?もしかして輪花母の奪ってつけました?(次観るとき確認します)

→指輪していました。輪花母の頭を撫でるところでよく見えます。また4歳の輪花を公園で待たせて車に乗り込もうとする輪花母は指輪をつけています。やはり輪花母がつけていた指輪を奪ってつけているのだと思います。


節子は吐夢を刺し、手を血に染めながら恍惚の笑みを浮かべます。これは今までの25年分も含めた満足感、達成感から笑みを浮かべたのではと考えました。また自分と同化させるため輪花の母へと渡した赤色(節子の象徴)を取り戻した表現でもあるのかもしれません。

 


◯クローバーと十字架
クローバーの花言葉キリスト教に由来すると言われている。聖パトリックは葉を信仰、希望、愛情にたとえ、4枚目の小葉を幸福と説いた。
また三つ葉は三位一体、四つ葉は十字架を表すとも。
キリスト教において十字架は罪の象徴、処刑のシンボル。
調べてみると
「十字架の縦の棒は英語の大文字のI(アイ)、すなわち私を、横の棒はそのI(アイ)私を切る(kill、殺す)ことを意味します。自分を殺して(自分に死んで)他者を生かすこと、ここに十字架の持つ本来の意味があります」というものもありました。
聖書の一節「自分のいのちにしがみつく者は、これを失う」
作中でも妻/夫ではなく自分の命を乞うたから殺され、そして顔に十字架を刻まれました。


また節子が輪花母や輪花にクローバーを渡したのは花言葉にある復讐の意味と十字架(罪)を突きつけているのだと思いました。

最後の水族館で輪花と吐夢はミズクラゲを見ており、あれはミズクラゲの模様にクローバーを見立てているのだと考えます。2人の幸せを表しているのかと思いましたが、腑に落ちきらないので、こういう意図ではないかと考えた方がいましたらそっと教えていただきたいです。

 


サンセット大通り(輪花と剛が観ていた映画)
あらすじ「ハリウッドの売れない脚本家ジョー・ギリスはある日、借金取りに追われて逃げ込んだ屋敷で、隠居生活を送る往年の大女優ノーマ・デズモンドと出会う。彼女から脚本の執筆を依頼されたジョーは、住み込みで働き始めるが、やがて生活の全てを束縛されてゆく…(Filmarksより)」
作中で登場する脚本が「サロメ
サロメ」とは新約聖書を元にした戯曲です。
サロメの母ヘロデヤはヘロデ王の妃でしたが、元々はヘロデ王の異母兄弟の妻でサロメもそのあいだにできた子どもです。しかしヘロデ王と恋人同士となったため異母兄弟と別れてヘロデ王と結婚します。母ヘロデヤはそれを非難した洗礼者ヨハネを排除したいと思っていました。サロメは踊りが上手く、ある日ヘロデ王の前で披露したときに何でも褒美をあげると言われます。サロメは母ヘロデヤに囁かれた通り洗礼者ヨハネの首を求めました。そうして洗礼者ヨハネは殺されてしまいます。
聖書が元で不貞行為の要素もある「サロメ」が登場するから「サンセット大通り」が選ばれたのかなと勝手に想像します。
土屋太鳳さん主演、Aimerさんが主題歌を歌った「累」でも「サロメ」を演じているからその繋がりかもしれません。

 

 

 

 

【感想・疑問】
・佐久間くん演技がはちゃめちゃ、はちゃめちゃ上手い!!!いや、演技上手いの知っていましたけど、あの錚々たる豪華キャストのなかで悪目立ちすることも埋もれることもなく、しかし確かな存在感が吐夢くんにはあった。
・何を考えているのか分からない表情、光の入らない瞳は不安定さや不気味さと同時に寂しさや孤独感を感じさせる。ただ不気味な人じゃなく、どんな人なのかと興味を引かれる。
・佐久間くんて本人のキャラクターや表情から可愛い印象を抱きやすいけどスンッとした表情の吐夢くんだと美人さんなのがよく分かって……あまりの美人さん具合や睫毛の濃さに見惚れてしまうことがしばしば。
・輪花ちょっと迂闊じゃない!?自分が渦中にあることは分かっているんだろうからもうちょっと慎重に行動しよ!まあ信じてついて行かせたのは剛の手腕だよなって吐夢くんにもついて行くんかい!
・芳樹さん!!!!!!諸悪の根源あなたかよ!!!!!!!!
・ストーカーでおかしい人だけど憎めないというか可愛らしさもあって、殺人事件も利用や誤解されただけで本当は何もしていない。そんなキャラクターなのかなと観る前までは思ってたよ吐夢くん。
・「僕はストーカーだけどあいつは人殺しだ」って結局あなたも人殺しじゃん!!棚上げ!!!!


・剛や吐夢くんやべ〜〜〜奴なのに可哀想さが勝る。節子も可哀想なところあるけどそもそも不倫するな。
・剛、吐夢くん、節子は愛に狂っていて驚いたり疑問に思うような考え、行動をする一方で分からないでもないというか、いくらかは理解できる部分もあるのでより世界観に引き込まれる。
・夕方からの舞台挨拶で退場するとき佐久間くんが「ありがとう」の手話してて、なんか、すごくグッときた。
・輪花母、自宅で輪花ちゃんの話を聞いているシーンでは椅子に座り左横には4点杖を置いてる。介助は必要かもだけど短距離なら歩けるのかなと少しほっとした。白髪も染めてあって綺麗に整えられている。どうか穏やかに暮らしてほしい。
・節子がチャットをしている回想シーンでは内容はわりとイチャイチャした感じなのに、芳樹さんがチャットをしている回想シーンでは内容はもう終わっただろというもの。日付が5月と7月だけど2ヶ月のあいだに何があって芳樹さんは考えを変えたんだろう。
・剛からの手紙を見て輪花母が笑ったのはなんで?→私は《マリア》だ。 とあるから自分(輪花母)とマリアがごちゃ混ぜになってしまっているから?母さん=自分になっているのかな。
・公営団地に侵入した足元しか映っていない男は剛と吐夢くんどっちかな?→長靴か靴か分からないがロングコートではない。原作小説P106を読む限りでは剛っぽい。

 

 

【これを書くのに読んだ本、論文】
※ふむふむ、へえ、こういうこともあるんだくらいの読み方です。
映画マッチングパンフレット
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